看板は視認されて初めて価値を持つ媒体です。そのため設置場所の選定は慎重に行う必要がありますが、場所と同じくらい大切なのが位置と高さ。歩行者やドライバーから見やすい位置・高さに設置することは、看板の集客力に直接的に影響を与えます。この記事では、集客効果を高める看板の設置位置について、ポイントを解説します。

 

◇視線高1.2m/1.5m/2.0m—人間工学から決める高さ

看板設置において、高さの設定は集客効果を大きく左右する重要な要素です。適切な高さにない看板は、たとえ優れたデザインであっても、視認性が低下してしまい効果を十分に発揮できません。ここでは、人間工学に基づいた看板の最適な高さについて探っていきます。

 

◎視線の高さを考慮した看板設置の基本

看板は通行人の視線の動きの中で捉えてもらうことで、初めてその効果を発揮します。目線に合わせた高さに設定することで、情報が自然に視界に入り、認知されやすくなります。

人間の視線は歩行時にやや下方に向くことが多いため、看板を設置する高さは一般的に1.5メートルから2メートルの間が推奨されています。この範囲であれば、歩行者は無理なく看板情報を認識でき、首を大きく傾げることもありません。

 

◎目的別・最適な高さの選択

1.2m:近距離での情報伝達に適した高さ

1.2mという低めの位置は、歩行者がすぐ近くに立った際に、楽に目に入る高さです。店頭での商品説明やプロモーション情報など、近距離で詳細を読んでもらいたい看板に最適です。この高さは、比較的長い文章の情報も伝えやすくなります。

1.5m:歩行者視点で最も自然な高さ

1.5mは歩行者の自然な視線高にほぼ等しく、多くの場合で最も高い視認性が得られる位置となります。この高さは、歩行者の視線を引き付け、無理なく情報を伝えることができます。店舗入口や歩行者の動線など、通行人が主なターゲットとなる場所では、この高さを優先的に検討すべきでしょう。

2.0m:遠目や車両からの視認性を重視した高さ

2.0mという高さは、車両の通行が多い道路や、遠くからでも視認できることを目的とした看板に適しています。歩行者からはやや見上げる位置になりますが、車内からは運転手の視線に合致しやすいです。

 

◎高さの選択がもたらす心理的効果

看板の高さは、単なる視認性だけでなく、見る人に与える心理的効果にも影響を与えます。1.5mの視線高に設置された看板は、「対等」な印象を与え、親しみやすさを感じさせます。一方、2.0mのやや高めの位置は、少し見上げる形になり、店舗やブランドの「存在感」や「権威」を伝える効果があります。

 

 

◇車速別の視認時間(都市部/郊外)と掲出位置

看板の効果は、人々がそれを見る「速度」によっても大きく変化します。歩行者と車両、都市部と郊外では、看板を視認できる時間がまったく異なるのです。以下では、ターゲットの速度環境に応じた看板設置のポイントについて考察します。

 

◎速度と視認性の関係

当然ですが、車両の速度が上がるほど、ドライバーが看板を認識できる時間は短くなります。これは人間の視覚認知特性に由来する重要なポイントです。

時速40kmの車両は1秒間に約11m進みます。この速度では、ドライバーが看板を認識し、内容を理解するまでに約3秒、つまり約33mの距離が必要です。一方、時速60kmでは1秒間に約17m進むため、同じ3秒の認識時間でも約51m移動することになります。設置を計画する際は、この「認識に必要な距離」を意識する必要があります。

 

◎エリア別・最適な掲出戦略

都市部:複数回見せることで印象を強化

信号の多い都市部では、車両の速度が比較的遅いものの、視線を遮る障害物や競合看板も多いという特徴があります。交差点が各所にあるため、停止・減速するポイントが定期的に訪れます。

この特性を活かし、都市部では重要な情報を繰り返し提示する「リピート掲出」が有効です。例えば、目的地の200m手前、100m手前、50m手前と段階的に看板を設置することで、ドライバーに確実な案内を行うものです。高さについては、車線や歩行者との兼ね合いから、2.0mから2.5m程度にするとバランスよく視認されます。

郊外・幹線道路:より早い段階からの情報提供を

郊外や幹線道路では、はやい速度で通過されてしまうと取り返しがつかないというリスクがあります。また、夜間の視認性も考慮する必要があります。

時速60km以上で走行する車両を想定する場合、看板は100m以上手前からでも視認できる位置に設置することが望ましいです。文字の大きさも、都市部の看板よりも大きくすると良いでしょう。一般的に、時速60kmでは最低20cm、時速80kmでは30cm以上の文字サイズが推奨されています。高さについては、遠方からの視認性を考慮し、2.5mから3.0m程度が適している場合が多いです。

 

◎速度環境に合わせた情報設計のポイント

速度が異なれば、看板に記載すべき情報量と内容も変わってきます。高速走行時には、複雑な情報や長文の理解は困難です。

時速40km以下の環境では、ある程度の詳細情報(電話番号、営業時間など)を記載することができますが、時速60km以上の環境では、「店舗名」と「方向指示」など、必要最小限の情報に絞るべきです。

 

 

◇袖・壁面・屋上—多層サインの役割分担

効果的な店舗サイン計画において、単一の看板にすべての役割を担わせるのは非現実的です。異なる高さと位置に設置された複数のサインが相互に補完し合うことで、初めて最大の集客効果を発揮します。ここでは、袖・壁面・屋上の各サインが果たすべき役割とその補完性について解説します。

 

◎多層サインシステムの基本概念

多層サインシステムとは、異なる距離や角度から顧客を誘導するために、複数の看板を役割分担させて配置する手法です。それぞれが特定の目的を持ち、相互に連携することで、情報伝達の効率を高めます。

遠方から近距離まで、段階的に情報提供することで、心理的なハードルを下げ、自然に店舗へと導くことができます。異なる視点からのアプローチも可能になり、幅広いターゲットにリーチできるという利点もあります。

 

◎各サインの役割と特徴

袖看板:歩行者への接近時アプローチ

袖看板(建物の側面の看板)は、比較的近距離から店舗を見る人々に対する訴求を担当します。主な役割は以下の通りです:

  • 詳細情報の提供:営業時間、商品情報、キャンペーン内容など、来店決定に直結する詳細情報を伝達
  • ブランドイメージの強化:ロゴやカラーリングを繰り返し強調することで、ブランド認知を高める
  • 入口の明確化:店舗入口の位置を明示し、迷うことなく入店できるように誘導します。高さは1.2m〜1.5mが適しています。

壁面看板:中距離からの認知形成

壁面看板は、歩行者またはドライバーに対して、店舗の存在と基本的な情報を伝える中心的な広報の役割を担います:

  • 店舗の認知:店舗名と主要な業態を明確に表示し、「何のお店か」を即座に理解させる
  • ブランドアイデンティティの確立:特徴的なデザインやカラースキームで競合との差別化を図る
  • 価値提案の提示:主力商品やサービスの魅力を視覚的にアピール

設置高さは1.5m〜2.0mを基本とし、歩行者と車両の両方から視認できるバランスを考慮しましょう。

屋上看板:遠方からの存在アピール

屋上看板は、最も遠くから視認できる看板として、広域からの顧客誘引を担当します:

  • 遠距離からの認知:数百メートル先からでも認識できる大きさとデザインで店舗の存在をアピール
  • ランドマークとしての機能:エリア内での店舗位置を明確にし、道しるべの役割を果たす
  • 企業力の表現:大規模で目立つ看板により、信頼性と実力を印象付ける

文字やロゴは極力シンプルにし、遠方からでも一目で理解できる内容に絞ると良いでしょう。

 

 

◇まとめ

看板設置においては、伝えたい情報の内容と設置場所の環境を考慮して、最適な高さを選択することが重要であることをお伝えしました。そのため、自店のターゲット顧客が主に歩行者なのか、車での来店客なのかを設置前に検討することも大切です。看板の高さは、設置してから変更するのが困難なので、慎重に決定することをお勧めします。この記事の内容が看板の効果向上の役に立てば幸いです。岐阜県内での設置に際しては、ぜひワンズプランニングへお問い合わせください。